*:*:: 『王女アストライア』 ::*:*

時はマケドニアが天下を治めようとしていた時代。
マケドニア王フィリッポス2世の息子アレクサンドロスと、
人間の魂を管理する、天界、テーヌ・フォレーヌの王女であるアストライアの物語。

16歳を迎えたアストライアは、宴の席で髪を結っていた飾りが取れてしまう。
「宴の間は部屋から外に出てはならない」という言い付けを破り、アストライアは髪を直すため、部屋を後にしてしまった。
控え室に戻ったアストライアは、偶然…女神ヘラと男神との密会を見てしまう。
言いつけを破り、挙句この情事の場を見られた女神ヘラ。
彼女の怒りは真っ直ぐにアストライアへと向けられる。
「愛する者と決して結ばれることなく、永遠に人間界で生死を繰り返せ」
恋愛を司る女神からの恐ろしい呪文を受けてしまったアストライアは、天界テーヌ・フォレーヌから、人間界へと追放されてしまう。
見ず知らずの土地を彷徨っていたアストライアは、戦の途中であったアレクサンドロスと出会う。
命を失いかけていたアレクを、必死になり助けるアストライア。
惹かれあう二人は、いつしか行動を共にすることとなる。
しかし、アストライアに掛けられた呪いが解けることは決してなかった。
辛い現実を受け入れなければいけないアストライアの運命は……?


テーヌ・フォレーヌシリーズ第一巻です。
恋愛の話だけでなく、アレクをとりまく仲間たちとの友情、そして、アストライアの出生の謎、アッタロスとフィリッポスの陰謀……。
様々な要素がちりばめられ、息つく暇を与えません。
個人的には、『王都の将アレク』に続くこの巻の終り方が、本当に憎い演出だと思います!
気になって気になって、夜も眠れないほどです(笑)

ひとみ先生のアルバム「恋物語」に収録されている同名タイトル「恋物語」は、このテーヌ・フォレーヌシリーズのアレクをイメージとして作られている曲です。
アレクとアストライア、そして仲間たちとの事を綴った歌詞が、大好きです。
とにかくお薦めなので、ひとみ先生ファンの方やこのシリーズがお好きの方はぜひ!!

1990年に新潮社から発行された初期のこのシリーズには、挿絵は一切ありません。
表紙のイラストを担当されたのが、高田明美さん。
彼女のイラストひとつで、無限に広がる世界に思いを侍らせるのも、素敵です♪

*:*:: 『王都の将アレク』 ::*:*

アッタロスの策略により、命の危険にさらされていた、エリス・ルーカス・アンリオンらが帰還した。
喜びに浸るアレクやアストライアの前に立ちはだかった次の壁は、アレクサンドロスの十八歳を記念して行われる公式行事、「成人の儀」だった。
儀式の最後に行われる、ゼウス・アモン神を降臨させた乙女と一夜を共にする「聖殿の儀」を前に、アストライアの心は張り裂けそうになる。
自分以外の女を抱くアレクを想うと、切ない思いでやりきれないでいた。
式典への参加を拒み、自らの部屋に閉じこもるアストライア。
そんな彼女のひたむきな想いに気づいてしまったのは、エリス・ファルドだった。
一方で、アレクを心から信頼し、自分に生きる道を与えてくれた彼のために、エリスは、アストライアに芽生えた恋心を懸命に抑えつけた。
そしてついに、式典が始まる。
あくまでも義務として、王子の責務として儀式をこなそうとしているアレクの前に、新たな策略が張り巡らされていて……?


どんなにアレクを想っても、ヘラの呪いを打ち破ることは出来ずに打ちひしがれるアストライア。
「愛」を伝えられないのであれば、「友」として傍にいられるだけでいい!
心でそう思っていても、直面する厳しい現実に、涙を流さずにはいられない。
そんな彼女を見ているだけで、涙が溢れ出してしまいます。
止まることなく繰り返される、悪夢のような現実。
たとえ百万回の苦しみに耐えて、たった一度の笑みを貰えることで満足できると思っていても、抉られるような苦しみには、どうしても耐えようがない。
この巻では、絶望したアストライアがとる行動にも注目して頂きたいと思います。
行き交う人が、皆アレクに見えてしまう……。
苦しむアストライアの心を、少しでも汲み取ってあげてください。
そして、アレクを想うアストライアに惹かれてしまっていくエリスの心内も、見逃せません。

*:*:: 『テセウスの誘惑』 ::*:*

アギスの息子リストパネス一行の策略によって窮地に陥っていたアレクを必死で助けたアストライア。
そんなアストライアに向って、アレクは自身で気づいてしまった自分の思いのたけをぶつけた。
しかし、アストライアを快く思わないエウリュディケによって吹き込まれた巧妙な嘘を信じきっていたため、アレクの言葉、気持ちを素直に受け入れることが出来なかった。
自分を信じてもらえなかったことに傷ついたアレクは、アストライアへの想いに、自制をかける。
そんな折、戦火の激しいアテナイへ出向くようにと、父王フィリッポスから命が下る。
愛するアストライアからの気持ちを知らされるも、アレクは残される彼女のことを思い、「自分のことは忘れるように」と告げ、激しい戦いの中に出向いていった。
アレクがいなくなったペラのアストライアの元には、冥界の王子テセウスが現れる。
さらに、アストライアの兄エトワスまでもが、アレクの命を狩るために策略を立てはじめるのだった。


アストライアを取り巻く男性陣の不穏な動きが、ますます見逃せないシリーズ第三巻です。
すれ違うアレクとアストライアの想い、そして、彼らを邪魔する様々な障害。
アレクの聖剣ガルダントの聖霊に、ただ一つだけかけられる願いごとを、自分の身分を復権させる為に使うと誓ったアストライアだったが、その願いを、アレクの命を守ってもらうようにと、頼んでしまった彼女は、天界からも見放され、文字通り孤独となってしまうのですが。
最早ここまで来ると、なにがなんでも、アストライアには幸せになってもらわないと、不憫でしかたない;
何度読んでも、可哀想で泣きたくなってきます。

*:*:: 『水晶宮のエリス』 ::*:*

瀕死の重傷になりながらも、エリスを抱えてペラへと戻ってきたアレクは、少し、また少しとゆっくりと回復に向っていた。
そこへ、フィリッポスの側へと潜りこんでいたエトワスが現れる。
アレクの命を奪うには、彼を守っている聖剣ガルダントが邪魔となるため、そのガルダントを彼の周りから遠ざけるようと、エトワスは自分を変えてまで、ある人物に接近する。
彼に夢中になってしまっていたその人物が、アレクの元から聖剣を遠ざけたとき、エトワスはアレクに襲い掛かる。
その状況に気付いたアストライアは、自分に出来る唯一のこと――床を叩き、冥界の王子テセウスの力を借りることによって、アレクの命を助けたのだった。
しかし、床を叩きテセウスを呼ぶことは、アストライアが彼と結婚をすることが条件とされていた。
意識が戻り、ようやく、本当の愛する気持ちをアストライアに告げられると想っていたアレクに、アストライアは、無常にも自らが結婚するという事実を告げるのだった。
一方、アストライアへの恋心と、アレクへの友情に心の均衡を失ったエリスはついに……!?


テーヌ・フォレーヌシリーズ第四巻です。
どんなに先が読みたくても……気になっても! ここで話はストップしています;
アストライアとアレクの運命、そして、アストライアの出生の秘密、さらに、エトワスの安否。
今後、このシリーズにどういう結末が待っているのか。
分かるのは、一体いつになるのだろう……。
ちなみに、新潮版から出た際の発行年月日は、平成五年三月。
かれこれ、十年以上前になるのであります…。
ホントに、生殺し状態です(涙)
アレクとアストライアには幸せになって欲しいけれど、もちろんエトワスのことも気になるし……。
続き、本当に読みたいです。
もちろんそのときは、新潮社さんから出版してくださいね。
ビーンズ文庫版は安っぽいから好きじゃないです。